七月二日(土)
今日は学校が休みなので、朝から晩まで死ぬ方法を考えることができた。
しかし、一介の女子中学生が出来る自殺の方法は思ったよりも少ない。
服毒自殺できるような薬は持っていない。睡眠薬だか何だかを、大量に飲めば死ねるような事を何処かで聞いた事があるが、うちには睡眠薬が無い。
もっとシンプルに考えよう。
ナイフはどうだ。心臓を一突きにしたらいくら何でも死ぬだろう。
でもうちにはナイフが無い。
包丁はあるが、今日の夕食はレバニラ炒めだった。
何かレバー切った後の包丁って嫌だなあ。
綺麗に死ぬつもりは更々無いのだが、最低限死守したいラインはある。
そもそも心臓って本当に左側にあるのか。
理科だか保健体育だかで見た、人体の内臓の図では何だか真ん中にあったような気がするが。
自分の胸の真ん中をさすると、結構硬い気がする。こんな所に私の力で包丁が刺さるだろうか。
失敗するような気がする。ここを包丁で刺すのを失敗したら、それはそれは目ん玉が飛び出るくらい痛いような気がする。
頚動脈を切ると簡単に人は死んでしまうと聞いたが、頚動脈って首の右側だろうか、左側だろうか。
リストカットという手も思い付いたのだが、あんなに失敗している人がいるのだ。自殺初心者(?)の私には難しいように思う。
血が出る奴は部屋の掃除が大変だろう。
飛び降り自殺も考えたのだが、うちは平屋の一戸建てだ。
屋根から落ちても、余程打ち所を悪くしなければ死ねまい。
それにうちにはハシゴが無い。
雨どいを上る事も出来ない事は無いが、上っている最中に見られたら、どう言い訳すれば良いだろう。
第一、ハシゴも無いのに屋根から落ちて転落死したら、ちょっとしたミステリーになってしまう。
私は別に、探偵に自分の死の謎を解決してもらいたいとは思っていない。
入水自殺も無理だ、周りに海も湖も池も沼も無い。
身近にある豊富な水場は風呂くらいだが、肩までつかるのが精一杯のあの風呂で溺れるのは無理だろう。
焼身自殺も難しい。
うちにはガソリンなんて無い。あるのはてんぷら用の油くらいだが、流石にあの量では焼け死ねないだろう。と、言うか焼死っていったいどれくらいの量のガソリンが必要なんだ。
それに万が一、家に火が点いたら放火になってしまう。家が無くなると親が困るだろう。
ガス自殺も考えたが、家のコンロはこの前お母さんの強い要望で、電気で熱くなる奴に変えられてしまった。何てタイミングが悪いのだろう。
練炭を燃やすと一酸化炭素中毒で死ねると聞いたが、練炭って何だ? 普通の炭と違うのか? 普通の炭なら確か冷蔵庫の脱臭剤に入っていたような気がするが、粉々だったと思う。あれに火が点くのか? そもそもあんな量で足りるのか?
そう言えば、一酸化炭素中毒って部屋が密室じゃないといけなかったと思う。この部屋全部を目張りするのか? そんな手間が掛かる方法はやりたくない。
どうやら自殺と言うのは思ったよりも面倒臭いらしい。
どの方法も、よく分からない道具が必要か、何処かへ出掛けなければならない。そんな手間は掛けたくない。
生きるのにも面倒臭い私は、死ぬ事にも手間を掛けたくない。
何だかもうどうでも良くなりかけていた私だが、何の気無しに天井を見上げていた瞬間、グッドアイデアが閃いた。
そうだ、首吊り自殺があるじゃないか。
気付いた瞬間、私は小躍りしそうになった。
いやあ、何でこんな簡単な方法を思い付かなかったんだろう。
これで死に方は決まった。
私は清々しい気持ちで死を迎える事が出来る。
それでは皆さん、さようなら。
駄目だった。
どこを探してもロープが無い。
だが、私はあきらめない。
ロープくらいなら近くのホームセンターか何かで売っている筈だ。
値段もそんなに高くあるまい。お小遣いで買える筈だ。
よし、明日早速買って来よう。
考えがまとまると途端に眠気が襲ってきた。
きっと脳をフル回転させたからだろう。
こんなに真剣に何かを考えたのは何年振りだろう。
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