amnesia
今はまだ、醜い芋虫。
やがて更に醜い蛹になる。
けれどもいつの日か。
私は美しい蝶になる。
ああ。
私が。
私が壊れていく。崩れていく。ゆがんでいく。ひずんでいく。撓んでいく。ねじれていく。裂かれていく。流れていく。侵されていく。やぶれていく。潰れていく。千切られていく。喰われていく。砕かれていく。飲み込まれていく。混ぜられていく。溶けていく。爛れていく。滅んでいく。無くなっていく。死んでいく。消えていく。消える、そう、消えていく。消える、消える、消える、消える消える消える消える消える消えるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるきえるけされていく。
何故、何故。
それだけが私の頭の中をよぎっていく。
そして、そのことすらも、今まさに私の中から消えようとしている。
私の体が泡になって、四方へと拡散していく。
私はもうすぐこの世界からいなくなってしまう。そう、少なくともこの世界からは。
私を見ている。あの人が見ている。どうしても会いたかったあの人が。
ああ。
でも、こんな終わり方も悪くないかもしれない。やっと、やっとあの人に逢えたのだから。
ああ。
でも、きっと次に目が覚めることがあったとしても、私はもう今の私では無いのだろう。
ああ、ああ。
世界がきえる。
私がきえる。私の世界がきえていく。私のいない世界など、私にとってはもうどうでも良いことなのだ。
ああ、ああ。
私がきえていく。けされていく。
涙がまた一筋、頬を伝ったような気がしたが、きっと気のせいだろう。
何故なら私はもう、私ではないからだ。
ああ。
もうこの世界には帰って来れない。
何故なら私は、還るのだから。
私はわたしに還るのだから。
だから、大丈夫。
そう、大丈夫。
ねえ。
そうでしょう?
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