自殺日記を書きましょう
「私」なんていなくなってしまえば良いと、思っていた。
七月一日(金)
さて、そろそろ死のうかと思ったのでこれを記す。
私は坂東洋子。市内の公立中学に通う、十四歳の中学二年生である。
遺書なのだから死ぬ理由をこれから書かなければならないのだが、実は私にこれと言って理由は無い。
別に家が貧乏でお金が無いとか、学校で虐められているだとか、不治の病に侵されているだとか、目も当てられない程頭が悪いとか、二目と見られぬブスであるとか、好きな人にふられたとか、そういう分かり易い理由は無い。
まあ、家は金持ちじゃないし、成績も中の中くらいだし、顔も別段可愛い訳じゃないから、威張れるようなものは何も無いのだが。
敢えて言うのなら生きる理由が無い事が理由か。
そう、私には生きる理由が無い。
生きていて楽しい、嬉しい、ああ生きていて良かった、という感情が無い。
小さい頃からずっとそうだった。
成績はどんなに頑張っても中の上、テストはいつも平均点より少し上。
ついこの前の期末テストの結果が続々と判明しているが、どの教科もやはり同じようなものだった。
じゃあ頑張らなければどうなのかと言うと、平均点より少し下回るくらい、中の下。
これではやる気も出はしない。まあ、夜寝る間も惜しんで死ぬ程勉強した事は無いので、どんなに頑張っても、と言うのは少し大袈裟だが。
スポーツもあまり好きじゃない。
運動音痴では無い代わりに得意競技も無い。
やりたいスポーツも特に無いから部活はやってない。
朝練だか何だかで、わざわざ朝早起きしてまでスポーツに励む生徒の気持ちが理解出来ない。
恋愛になると尚更興味が沸かない。
周りの女子達は、すぐに誰それちゃんは誰それ君が好きなんでしょなどと言った会話で盛り上がれるのだが、生まれて此の方他人など好きになったことの無い自分には、やっぱりそう言う女子達の気が知れない。
まあ、自分のことも別段好きな訳ではないが。
言ってみれば。
私は何にも興味が無いのである。
七月にも入れば、クラスは夏休みの話題でいっぱいになる。
登校してから下校するまで、ひっきり無しに夏休みは海に行くだの山に行くだの海外に行くだのと皆、喋り続けている。
そんな中、私は常に少しばかりの疎外感を感じている。
休みだからって、別段楽しい事などありはしない。
うちだって、毎年夏には田舎のおじいちゃん達に会いに行ったり、申し訳程度の小旅行には出掛けるのだが、やはりこれも楽しいと感じた事は無い。
私は学校が楽しいとも詰まらないとも思わない代わりに、夏休みも楽しいとも詰まらないとも思わない。
本当にどうでも良いのである。
だから。
生きている理由が私には無いから、死のうと思っている。
別に死後の世界に興味がある訳ではない。
死後の世界はきっとここより素晴らしいに違いないと言った妄想を抱いた事も無い。
むしろ、私は死後の世界なんてものは無いのだろうと思っている。
地獄も無い代わりに天国も無い。
死ねば、焼かれて、灰になって終わりである。
これ程までに全ての物事に興味が無い私は、生きているのが申し訳無いとすら感じている。
世の中に生きたくても生きられない子供がわんさか居る筈なのに、私は生きる希望も持たずに貴重な食べ物を消費し、無駄に二酸化炭素を吐き出して地球温暖化を加速させている。
きっとこんな私は死んだ方が世界の為にも良い。
以上の理由から、私は死のうと思う。
皆さん、さようなら。
しまった。
死ぬ方法を考えていなかった。
もう眠い。今から死ぬ方法を考えるのは少々しんどい。
明日にしよう。
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